―――共和国領中央セクター・セントラル、デュナミス評議会堂にて。
そこには共和国二大評議会の1つ、共和国イニシエーター協会最高意思決定機関【デュナミス評議会】。その評議会のメンバーが評議会堂に集っていた。
「───危惧すべき事が起きたようだ」
最初にそう言ったのはデュナミス評議会の議長【unknown】。議長の座につくものは、以前の名を失うため、彼を呼称する名前はない。それは、己の肉片一片から己をなす概念そのものまで、一切の要素を捧げる故に、その証として名を亡くすのだ。
かつては【シュデーゲン・アルブルノ】と名乗っていた。
年相応の貫禄に相応しい白い髭を生やし、その瞳はどこか生気のない印象を周りに抱かせる。
「───えぇ、かの力を放置しておくのは余りに危険すぎますな。あれが人組織相手に実力を行使したのだとすると、あまりに品がないことで」
議長の隣の席に座るその男、【アタランタル・シフト】はそう言った。
「───エンプレセス指定。第九の人外終局者『ツクヨノ=イナバ』。かの存在は今日において人類圏に侵入した痕跡はあったものの、マギの発見、ファーストコンタクト以来その足取りすら掴めずにいたが……。ようやくその活動の一端が確認された。直ちにESM特務機関を緊急招集し、事に当らせる」
議長はそう言うと手元の端末を操作し、とある人物をこの場に要請した。
「ネクロウルカンについてはどうすんだいじぃさん?ほっといていいのかー?対処するなら俺にやらせてほしいんだけどなぁ......、神話に謳われるような強さ……是非味わってみたいねぇ〜」
議長にそうお調子良く言ったのは、後ろ髪を一つに結んだ金髪の男、【デイマン・ヴォーガン】だ。
「───許可しない、ネクロウルカンの対応は全て【ミナーヴァ】に一任する。それに、そやつの出現は、我々が直に当たるほどの重大な事態ではない。その他のことについての諸問題は【ベルセクス】を行かせる。お主の出番はない」
「へぇー。わざわざベルセクスに何させるってんだぁ?随分本気じゃないの」
デイマンはそう言うと、全身を鎧に包み、頭部の十字バイザーから紅い光を放つその巨体の存在。『ベルセクス・ディーアナイト』に視線を集めさせる。
「───今回の紛争。枢騎士評議会と結託して引き起こし、レイシスオーダーに加担した裏切り者がおる。衛星事件やネクローシスの一件、その全てを裏で糸を引き、我々を混乱に陥りさせようとした。デュナミス評議員【サイード・ボルトア】の粛清だ」
議長がそう言うと、デイマンは口笛を鳴らした。
「───あの男は卿国に亡命しようとしている、その前に仕留めなければな」
黒いサングラスをしたオールバックのその男、【エスタノール・ハインケイン】はそう言った。
ハインケインの発言の後、室内に司法機関の制服を着た女性が入ってくる。
「───招集に応じ、馳せ参じました」
その女性は姿勢正しく一礼し、イニシエーターの指導者達を前にしても気圧される様子もなく、ただ彼らの前に佇んだ。
「ESM特務機関特別司法事官【マギ】よ。第九人外終局、その収容の特命を追加で言い渡す。引き続き世界の為の保全に務めよ」
「───承知致しました議長、直ちにESM特務機関は行動を開始します」
そう言い渡されたマギは、可憐な所作で速やかに室内から退出する。その彼女の後姿を、ハインケインとデイマンは怪訝な視線で追った。
「───あんな奴が共和国司法機関中枢に居座っていると思うと、中々に肝が冷えるな」
ハインケインはそう言葉を漏らした。
「ではミナーヴァよ、あとの始末は任せる」
「───はい」
議長の言葉にそう短く返答した女性は、議長席の反対側に席を置き、白銀髪の長髪と、禍々しい紅眼の瞳を持っていた。
頭にはティアラのような装飾品があり、靴は履いていない。
そして風もない場所で常に靡く白銀のドレスを纏う姿は、まるで一見すると一国の女王のような風貌をしていた。
その人物は【ミナーヴァ・テレサテレス】と呼ばれる人物だ。
こうしてデュナミス評議会は、エンプレセスの活動の活性化に伴い、各々の行動を開始する。