ダグネス・ザラが構えた二本の深紅に輝く刀身は、レオを真っ正面に捉え、そしてそのまま走り込んでくる。
「真っ正面からとはなんて親切な、いい的だぜお嬢さん......!!!」
レオは真っ正面に突っ込んでくるダグネスに向けて三発の圧縮弾を直線上に放つ、その後の回避行動を予測、回避予測軌道を読みながら着地地点に照準を構える。
「……?。私の回避行動を読んでいるのか。優れた目を持っているようですね、ですが。そんなものではまだ私に届きませんよ」
初弾に放った三つの弾はダグネスの半径約1.5m以内に近づくと直ちに白煙を上げて消失した、これは当初の見立て通り。
彼女もまた空間障壁とやらの能力を保有していて、簡単な銃撃はそれで防がれる。
故に回避行動は取らない。
「だろうな......!じゃあコイツならどうかな!」
レオは先ほどのもう一人のレイシス、ファルファを開幕一撃で戦闘不能にさせたものと同等の圧縮弾を回避行動予測地点に発射する。
彼女からすれば銃撃は明後日の方向に突き進んでいるように見える。
だがこの銃型ソレイスには追跡機能、要するにホーミングがある。少女がそのことに気づかず、このまま障壁頼りにこちらに突っ込んで来てくれれば、死角からの直撃を狙えるはずだ。
回転を交えた圧縮弾が彼女の横を通り過ぎてから、あからさますぎないホーミング侵入角50付近。ぎりぎり弧を描いて背後をつける。
その間に、気をこちらに使わせば勝機はある。
「さぁ…このままこい…!」
ダグネスのヘイトをこちらに集中させるために、銃型ソレイスを直線状に連射する。
彼女はレオの意のままに直進を続けた、そしてやがて弧を描いて戻ってきた圧縮弾が彼女の背後をついた。
凄まじい爆風と熱風を前にレオは目を腕でガードした、腕の隙間からダグネスの様子を伺うと、目を疑う光景がそこにあった。
「……はぁ、危ないですね」
防がれていた、先程のファルファという枢騎士を一撃で屠った一撃を。彼女は進撃を止めはしたものの、全くの無傷だ。
そして一瞬の瞬きの出来事だった、彼女は視界から消えていた。
おかしい、微かに漏れた彼女の吐息が背後から聞こえる。レオは死を悟るような、そんな感覚に襲われる。
「まじ……か、おわったか……これ……」
一息溢れたそんな言葉、それをすぐに押し殺し、すぐさま銃を背後の彼女へと向けた。
しかし体はある違和感を覚える。そっと下に目を向けると、自分の体が背後から深紅の剣で貫かれていた。それを認識した脳は徐々に痛みを増幅し、やがてレオは激痛に見舞われ声にならない叫び声が空間に鳴り響くと、レオは地面にひれ伏した。
「……ぐうぅ......、くそっ!!!見えなかった……!!!こんなの!!!人の手に負えるわけがない!!!むちゃくちゃだ!!!」
レオは激痛に苛まれる中、自身への戦闘の敗北と、理不尽なこの世界へ激しい怒りを覚えた。
「……。貴方の怒りは理解できます。だからこそ、貴方はこんな所に最初から来るべきではなかった。己の腕が通用する世界で、留まっていればよかったのに。あぁ、それと。確かにあなたのそれは我々の障壁をいとも簡単に破壊できる代物なのでしょうが、あなたの放ったエネルギー体には脆弱性がありました。まとまりのない力の奔流は流体の際を不安定にさせてあげるだけでバラバラになります。言っておくと、特別に私が強靭な障壁を持っている。という訳ではありません、むしろその強度は他者に劣ります。私のような劣等者がこの世界で生き残る為には、力に頼らない、別の力学で克服し、強者達と渡り合う必要があるのです。アナタ、相手が悪かったですね。私でなければやられていたでしょう。人の身でよくここまでやれたものです。賞賛しますよ、あなたを。……あと、それ。どこかで見たようなソレイスですね……人の身でソレイスを扱っているというのも不思議ですが、なぜそれが貴方のようなところに……?まぁまず、それは置いておきます」
ダグネスは引き抜いていた剣を莢に収め、そのまま話を続けた。
「お見受けしたところ、あなたはこちら側の戦いに慣れていない。というか何も知らないようですね、それか知らされていないのか?あなたのバックの組織が何者なのかは知りませんが、こんなところに忍びにくる以上は我々に関する知識はあったはずですが……」
確かに少女の言う通りだ、アイザック達が彼女らの存在を知らなかったわけがない。相対した時の対処法のひとつくらい教えてくれていてもいいはずだ。こんなリスクの高いことを俺にやらせた理由が分からない……、いや。ワザと接触させるように俺をここに仕向けたのか?だとしたら目的はなんなんだ?クライネさんは、このことを知っていたのか......?
はぁ、分からないことだらけだ。俺の意思などまるで関係ない、介在する思惑だけが俺を突き動かしている。まさに傀儡人形か......、俺はただの、そこそこ稼ぐ、はしくれこ傭兵だったんだがなぁ......。
レオは冷たさで静かに目を閉じると、そのまま意識を失った。
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「観察対象レオ・フレイムス。同伴のレイシス一名を戦闘不能にさせるもレイシスロードとの戦闘に敗北。その後意識を消失、その後の反応は見られず。どう致しますか、アイザック大佐」
「……そうか、分かったよクライネちゃん。特別な何かを、彼から観測出来るかと思ったんだけどなぁ……、残念だ。待機ポイントから現場に急行する、レオの死体を回収のち、帰投する」