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No.34784の一覧
[0] ゼロの魔法使い 【ゼロの使い魔パロディ】[タイガー五世](2012/08/26 19:45)
[1] 臆病ギーシュ[タイガー五世](2012/08/25 06:17)
[2] ルイズ、シャルロットを救う[タイガー五世](2012/08/26 20:41)
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[34784] ルイズ、シャルロットを救う
Name: タイガー五世◆30151364 ID:b090b790 前を表示する
Date: 2012/08/26 20:41
前回までのあらすじ

 男が一人、荒野を歩いている。
 天頂から照りつける太陽は無差別に殺人光線を放ち、熱せられた砂地は容赦なく男の足を奪い、行く手を阻む。

 男はただ、裁きを求めて彷徨う罪人であった。
 男は故国では勇敢なる戦士長であったが、その出自は低く、彼の国(かのくに)の貴族からは蛇蝎視されていた。
 とある美しい貴族の娘御と男との醜聞が取りざたされると、男を嫌うものは挙って身分違いの恋を非難した。

「娘の青き血は穢された。是即ち貴族として生きること許されざる、とく死ねかし」

 それを聞いた男は、娘の命を救うべく、国に伝わる三つの試練を受けることを選んだ。
 一つ、狂った獅子の王を退治すべし、一つ、山ほど巨大な岩を動かすべし、一つ、竜の肩のうしろの2本のゴボウのまんなかにあるスネ毛の下のロココ調の右の逆鱗を奪うべし。
 不可能に思えた試練を、しかし、男は確実に踏破していった。
 最後に男が、竜の肩のうしろの2本のゴボウのまんなかにあるスネ毛の下のロココ調の右の逆鱗を奪うに至って、男の名は民草に広まり、男を誉めそやす声が国中にこだました。
 男を嫌う貴族も、男を認め、握手と共に許しを求めた。
 彼は勇敢で、単純であったので、笑ってそれを許した。笑顔の裏に隠された貴族達の思惑も知らず…。

 男の凱旋から幾日か過ぎ、その功績を称える授与式が行われる運びとなった。
 授与式は国王自らが行い、国中の人間がそれを見んと集まった。

「此度の武功、誠、見事であった。お前こそ、真の王国無双よ!」

 王の口上に国中が割れんばかりの歓声をあげる。
 男の愛する貴族の娘も、嬉しそうに微笑み、それを見た男は満足そうに笑い、言った。

「いえ、あっしはこの国の戦士長として、当たり前のことをしただけでさあ」
「そう言わず、わしにお前を褒めさせてくれ。お前こそ建国以来の勇者よ!そして、そんなお前だからこそ、頼みたいことがあるのだ」
「へへえ、あっしに出来ることでしたら、なんでもお言いつけくだせえ!」

 元来気のいい性質であった男は、王の頼みを二つ返事で引き受けた。
 そう、男は、国中が見守る中で、決して破れない契約を結んでしまったのだ!

「サハラの砂漠へ出兵し、エルフを打破してくれ。さすれば我が国は更なる栄華を極めるであろう」
「それは…」

 王の命に、男は即答することができなかった。
 男は試練の最中(さなか)にとあるエルフの少女と親交を深めていたし、また、エルフの操る力強い魔法の数々を見知っていたからであった。

 男の逡巡を目にした王は嗤い、男に耳打ちする。

「なあに、留守のあいだは心配するな。お前の執心する娘は、わしがよおく可愛いがってやろう」

 王の言葉に、男は目の前が真っ赤に染まるのを感じた。
 気がつけば男は、王の肥え太った腹を、思い切り殴り飛ばしていた。

「戦士長が乱心したぞ!出合え、出合え!」

 周りを囲んでいた戦士たちが槍を構え、国民は英雄の突然の行動に批判の声を浴びせる。
 ここまで来て、男は自分が貴族どもの姦計に掛かったことを悟った。
 ここで男が王に殴りかかればそれで良し、もし王の命を受け出兵しても、碌な兵力も与えられず野たれ死んでいたに違いない。

 こうして男は国を追われ、片手に持てるだけの水と、食料を投げ渡され、『エイヘリャル(勇敢なる戦士)』として『ヴァルハラ』に往くことも許さぬと、身一つでサハラのただなかに放り出されたのだ。

「あっしの人生とは、一体なんだったのかねえ」

 男は一人、独白する。
 幾度も危機を乗り越えた自慢の肉体であるが、吹き荒れる砂塵と太陽の熱に、既に体力は限界を迎えていた。

 男の巨体が崩れ落ちる。
 男は体を動かすこともできず、仰向けに砂漠に沈む。男の口内に渋い砂の味が広がる。

 男は罪人であった。
 しかし、その心根はまっすぐで、魂は汚れなく清廉であった。

「あっしは、どうなっても、いい、どうか、あの人だけは…」

 薄れゆく意識の中。男は最愛の人の影を見た気がした。





 男が目を覚ますと、男は自分が懐かしいニオイに包まれているのを感じた(まるで男が生まれた田舎村のような!)。
 恵みをもたらす柔らかな土の匂い、山羊の発する饐えたような臭い、そして、どこか温かな朝餉のかおり。
 幾日ものあいだ、なにも口にしていなかった男は、思わず腹を、ぐう、と鳴らした。

「あらあら、元気のいいお腹ですこと。隣のお部屋まで聞こえましたよ」

 年頃の少女が朗らかに笑いながら部屋に入ってくる。男はたまらず赤面した。
 少女の手には弱った男でも食べやすいようにと、野菜が少なめのリゾットと、トウモロコシを水に溶かしたジュースがあった。

 男は思わず喉をゴクリと鳴らす。
 しかし、男は田舎者であったが、礼を尽くす心は人一倍持っていたので、まず初めに少女に尋ねた。

「あっしごとき流れ者に、過分なもてなしでございやす。しかし、恩を返そうにもあっしはこの身一つしかありやせん。あっしは恥知らずにはなりたくないんです。ただ、少しの水をわけていただけやせんか?」

 男の言葉に、少女は目を丸くすると、愉快そうに言った。

「あら、旅人さん。その立派な身一つあれば十分よ。この時期、手はいくらあっても足りないもの」
「しかし…」
「それにご飯に見合うだけのお手伝いは、お連れの方がしてくださったわ」
「お連れの方?いや、あっしは一人でいたはずで…」

 戸惑う男に、少女はニンマリ笑い、短くそろえた黒髪を愉快そうに弾ませると。
 それに私のお爺さまなんて、身一つで空からおりてきたのよ、と悪戯っぽく続けた。

「それじゃあ、ごゆっくり」

 少女は食事を置いて部屋を出て行った。
 残された男は、さりとて食事に手をつける気にもなれず、故国に残した最愛の娘の無事を願う。
 
「始祖ユミル…。どうか愛しいあのお方を、お救いくだせえ…」

 男は、自身の信仰する巨人の神へと祈りを捧げた。
 故郷から遥か離れた土地、ハルケギニアまで、彼の神の威光が届くかは定かでない。





「おはようございます。私の戦士長さま」
「お、お前さんは…なんで…!?」

 果たして、彼の祈りが届いたのかは定かではない。
 定かではないが、その日、男は生まれて初めて、声をあげて感涙にむせび泣いた。

 勇敢な戦士長と、美しい貴族の娘の話はこれにて閉幕となる。
 男がこの後、どのような生涯を送ったのかはようとして知れない。
 しかし、この事件の少しあと、トリステインのタルブという小さな村に、たいそう腕っ節が強く、気持ちのいい男と、その男を優しく支える妻が住み着いたそうだ。
 その男は過去の名はもう捨てたと言い、いまはただのジョン・スミス(名無しの権兵衛)だと名乗ったという。

 しかし、村の人々は、男の勇敢さと強さを称え――――










「その男は不死身のスミスと呼ばれ村人から慕われた。その不死身のスミスこそ、いま私たちの目の前にいる…」
「シャルロット!?シャルロットしっかりして!?」

 いかにも頼りになる風情で立ち上がったスミス。
 お母さんから聞かせてもらった騎士物語に憧れていたシャルロットは、彼をまぶしそうに見上げました。

 そんなスミスが、爆音と共にマリのようにポーンと投げ飛ばされるのを見て、シャルロットは恐怖で焦点の合わなくなった目で何事かをつぶやき続けます。
 キュルケは、この新しくできた、かわいらしい友人を守ってやれるのは自分だけだと感じ。
 盗賊から庇うように、シャルロットを強く抱きしめます。

「ああ、シャルロット!私が、お姉ちゃんが守ってあげるから!」

 宣言するように叫ぶと、キュルケの心に温かな気持ちがあふれます。
 キュルケは思います。シャルロットを守れるのは私だけ。私がいないとシャルロットはダメになっちゃう。だから、守ってあげたい!

 齢八つにしてキュルケは母性の人でした。良い悪いは別にして。





 そんな阿鼻叫喚の地獄絵図を尻目に、物陰で言葉を交わす少年と少女がいました。

「あちゃー、やっちゃった」
「何を考えてるんだいキミは!?」
「なんだか、ふっ飛ばさなくちゃいけない気がして、つい」
「ついじゃないよ!ああ、全部任せろっていうから、ついてきたのに、やっぱりろくなことにならなかった…」

 少女が杖をふりふり振りながら言い捨てる言葉に、少年は地面に手をついて嘆きます。

「まあ、見てなさいギーシュ。考えようによっては、こっちの方が都合がいいわ」

 そう言うと少女は獣のような笑みを浮かべ、物陰からヒラリと飛び出すと、地面に倒れ伏したスミスに向かって駆けよります。

「おじさま、ご無事ですか?」
「お、おお、あっしは体の頑丈さだけは自慢で…っていけねえだ!盗賊がいるかも知れねえ!ここはあっしが引き受けるから、逃げてくんろ!」
「ご安心ください。盗賊なら、このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが退治しましたわ!」

 少女、ルイズは天使のような悪魔の笑顔で言い放ちました。
 スミスは勇敢ではあっても、単純だったので、ルイズの言うことをすっかり信じて感謝の言葉を述べます。

「ありがてえ。お陰で助かっただ。お礼と言ってはなんだけども、あっしに出来ることがあったら、なんでも言ってくだせえ」
「あら、それでしたら馬車に乗せてくださらないかしら。私たち、アルビオンに行きたいの」

 とんとん拍子に進むルイズの恐るべきマッチポンプの手腕に、ギーシュは戦慄します。

「馬車の中にいる女の子二人も、安心してちょうだい」

 物語に出てくる騎士さまのように爽やかなルイズに、シャルロットはポっと頬を赤く染めます。

「ルイズお姉さま…」
「ダメよシャルロット!女同士なんて不潔だわ!お姉ちゃん許しません!」

 いまいち錯乱したままのキュルケとシャルロット。
 事件の真相解明を恐れてガクガクと震えるギーシュ。
 ルイズは満足そうに微笑み。スミスは御者台に乗り込むと、みんなに声をかけます。

「さあ、行きますだよ。あっしたちの冒険はまだ始まったばかりでさあ!」

 タイガー先生の次回作にご期待ください!


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