このお話は普通の女の子がちょっとした冒険をして、色々な人と出会い、少し成長する。
そんな、誰にでもあるような当たり前のお話。
昔々あるところに、一人の女の子がいました。
女の子の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
長い名前からもわかるとおり、偉い貴族のおうちに生まれたお姫さまです。
ルイズが7才の誕生日を迎える日。
その誕生を祝う席で、ルイズのお父さんは言いました。
「わしのかわいいルイズ。お前も立派に育った。そろそろ魔法をおぼえてもいい頃だろう」
そして、にっこり笑うと、とても高級そうな「かし」の木で造られた杖を取り出し、そっとルイズに手渡します。
ルイズは自分が大人として認められたような、とてもほこらしい気持ちになりました。
「まあ、お父さま。ありがとうございます。とてもうれしく思いますわ」
杖を持ったルイズは、一番上のお姉さんをマネるように、大人ぶって言ってみせました。
それを見た二人のお姉さんは楽しそうに、うふふ、と笑い。お父さんも杖を持ったルイズを見て、満足そうに何度もうなづいて言います。
「うむ、うむ、うむ。大変似合っていて、とてもよろしい」
いつもは厳しいお母さんも、笑顔を見せます。
「いいですか、これからは貴族としての自覚を持ち、しっかりと魔法の修練に励むのですよ」
みんなから期待されているのを感じ、すっかりとルイズの喜びが有頂天になりました。
「はい、まかせてください!私、今すぐにでも魔法を使えそうです!ためしに、ほら、『錬金』!」
ルイズが呪文を唱えると、お母さんの座っていたイスが大きく爆発して、お母さんはポーンと勢いよく吹き飛びました。
「わあ、すっごい!お母さまが吹っ飛んだ!」
「な、なにしてるのよチビルイズ!?」
「あらあら、まあまあ」
「に、逃げるのだ、わしのかわいいルイズ!」
「僕のラッキーがヘビに食われた!!」
ルイズは驚き、二人のお姉さんも大慌て、お父さんは恐怖で震え、周りにいた従者も叫びます。
吹き飛ばされたお母さんはというと、素早く『フライ』の呪文を唱えて宙に留まると、ニッコリ笑って言います。
「自覚を持てと言ったそばから軽々しく魔法を使うとは、誠に愚かで、軽慮浅謀であるッ!いざ、南無三――!」
お母さんが軽く手をふると、あたりは魔法の弾幕に包まれ…。
少女反省中
~ Now Remorsing ~
次の日。
ルイズは一人、原作二巻で夢に出てくる池のほとりにたたずんでいました。
改めて魔法を教えてもらっても、いまいちうまくいかず、爆風で家庭教師の先生が窓から放り出されるのを見届けると、叱られてはたまらんと屋敷から逃げ出したのです。
でも、ルイズは落ち込んでいませんでした。
自分には、大いなる力がある――サメやクジラを軽く吹き飛ばすほどの――そう確信していたからです。
ルイズは、たまに見える時の波、波動のようなもの、そして生まれた時から自身の中に渦巻く『なにか』を吐き出すように、呪文を唱えます。
エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド―――
すると視界が広がり、ルイズは自分の住む屋敷が手に取るように見渡せるのを感じました。
ルイズは、心のおもむくままに、それらすべてを『爆発-エクスプロージョン-』させるようなイメージで呪文を続けます。
ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラジェラ―――
昨日お母さんに叱られた言葉なんてなかったかのように呪文を紡ぎます。
イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン――
もう一息で呪文が完成するという瞬間、どこかから泣き声が聞こえて、ルイズの集中力は途切れてしまいました。
「もう、だれよ!おかげで屋敷が吹っ飛ばせなかったじゃない!」
ルイズは無意識にとんでもないことを口走り、遺憾の意を示すと、あたりをキョロキョロ見回します。
「うわーん、僕の名前はギーシュ・ド・グラモン初めての戦闘訓練でお父さまに勇気がないと叱られて今は勇気を身につける方法を探しているんだグラモン領とヴァリエール領の地理的条件は気にしないでください。うわーん」
わかりやすい説明を泣き叫びながら歩いている少年、ギーシュ・ド・グラモンをルイズはとりあえず蹴り倒しました。
「い、痛い!なにをするだ!」
「うるさいわね!あんたのお陰で魔法が完成しなかったのよ!とりあえず、あと15発で許してあげる」
あと100発なんて言われるよりも、痛みを想像しやすいリアルな数字に、ギーシュは顔を青ざめさせます。
「待て!僕はグラモン伯爵家の三男だぞ!許してください!」
ギーシュはお父さんから勇気がないと言われただけあって、権力を笠にきた上に卑屈に言い放ちます。
「親は関係ないのよ!親は!」
もちろんルイズは気にせず17発蹴りました。
「で、あんた、勇気を身につけたいのよね」
「は、はいッ」
ルイズのオシオキが終わったあと、ルイズとギーシュは語り合いました。
ギーシュは勇気がほしいこと、ルイズは魔法が使いたいこと、この世に生きる喜び、そして悲しみのこと、ルパン三世と銭形警部が実は同じ大学の先輩後輩だということ。
話すうちに、ギーシュはルイズの思い切りの良さと、後先考えない男気に惚れ込み、どうすれば勇気を身につけられるのか相談を持ちかけました。
「アルビオンね。アルビオンに行けば、あんたは勇気を手に入れて、私は魔法を使えるようになるわ」
「アルビオン!?なんでそんなことがわかるのさ?」
「ただの勘よ、でも、私の勘は外れたことがないの」
ルイズの原作を10年ほど先取りした発言に、ギーシュは喜びの色を浮かべ、しかしすぐに諦めたようにうなだれます。
「でも、アルビオンって言ったら隣の国じゃないか。僕たち子供だし、無理だよ…」
「たしかに、私たちは子供よ、でも、子供だからできるコトもあるのよ」
そう言ってルイズはニヤリと笑います。ギーシュは嫌な予感にブルリと体を震わせました。
場所は変わって、アルビオンへと向かう馬車の中。
その馬車の中に、二人の女の子がいました。
年のころは二人とも7つか8つを数える頃で、一人は小麦色の肌と燃えるような赤髪の健康そうな少女。もう一人は透き通るような白い肌をした青髪の少女です。
「だから、お兄様ったらひどいのよ。結婚するから家を出て行くって言うの!私はお兄様と一緒にいたいって言ったのに!」
赤髪少女の言葉に、青髪の少女はコクコクと同意します。
「ひどいと思う。家族は一緒にいるべき」
「そうでしょ!?でも、お兄様は『お前は恋を知らないからさ』って言って聞いてくれないの…。恋って、そんなに良いものなの…?」
怒りを吠えていたかと思うと一転、赤髪の少女はションボリとうつむきます。そして続けて言いました。
「だからね、私は恋を知るために旅をしてるの。あなたは、なんでアルビオンに?」
「私は…」
赤髪の少女の問いに、青髪の少女は黙ってしまいます。
家を出た理由は、あふれる魔法の才能に従姉妹のイザベラが嫉妬したり、お父さまが知らない人と難しいことばかり話して退屈だったり、お母さまの選ぶ人形のセンスが悪くてうんざりしたりと、色々あるのですが、何が目的かと聞かれると困ってしまいます。
それを一言で表すとすれば。
「私は、もっとかしこくなりたい」
なにをしても要領の悪い自分を変えたい。
そうすれば、みんなともっと仲良くできるはず、と青髪の少女は言います。
それを聞いた赤髪の少女は、感心したように相槌を打ちます。
「なら、賢くなる方法を、一緒に探してあげる。私も一人で旅をするのはさびしいなーって思ってたの」
「ありがとう。私の名前はシャルロット。あなたの名前は?」
「キュルケよ。よろしくシャルロット」
キュルケはコロコロ笑います。
シャルロットはふわりと微笑みます。
ルイズがどこかでニヤリと顔をゆがめると、次の瞬間、ドカーン、大地が割れるような大爆発が起こりました。
「な、なんの音!?シャルロット大丈夫!?」
「だいじょうぶ。でも、いまの音で馬が暴れている。これが盗賊だとしたら、逃げられない」
少し不安そうな顔をのぞかせたシャルロットに、しかし、御者をしていた年配の男性がやおら立ち上がり、男臭い笑みを浮べます。
「なあに、ご安心くだせえ、たかが盗賊ごとき軽く蹴散らしてやりますわい。かわいい幸運の女神さまが二人もいるんだ。もう何も恐くありません。それにこう見えてあっしは村一番の腕自慢で不死身のスミスと言われたもんでさあ、家族が待っているのにこんなところで死ねますかい。むかし盗賊から命を救ってくれた幸運のお守りもバッチリ持ってますし、圧倒的すぎてお二人には退屈かも知れませんが、別に、一人で倒してしまっても構わんのでしょう」
スミスはとてつもない勢いで死亡フラグを立てます。
果たして彼は無事に生き延びることができるでしょうか。
そして、爆発の原因のルイズは一体何者なのか!?待て、次回!!